2014年10月5日日曜日

学習支援事業「きずなレッジ」

先日、学習支援事業についてのプレゼンを行いました。その時の要旨を掲載します。
プレゼンの際に使用した資料は、こちらです。


まず、なぜ私たちが学習支援事業を始めたのかを説明させてください。

私たちは運営しているシェルターで、DVの被害を受け逃げてきた母子や様々な理由で家を出されて生活する場所がないたくさんの母子と出会ってきました。
彼らは安定した居所が見つかるまで学校に行かれないため、期間が長くなるほど、学校の勉強がおくれていく。一緒に逃げてきた母親は自分のこどもに勉強を教える心の余裕もない。このような状況を見ている中で、どうにかこどもたちに学習の場を提供できないのかとずっと考えてきました。
そのような時に、藤沢のホームレス訪問活動に参加していた高校の先生たちから、自分たちの職場でも、家庭・経済的な問題で、学習の機会に恵まれないために、退学する子どもたちがいる。そういう状況をなんとか少しでも良くしていくために、子どもたちに学習の機会と居場所を用意してあげられないだろうかと相談を受け、やってみようと昨年の秋から動きだしました。

昨年の6月に成立した「子どもの貧困対策の推進に関する法律」には、『家庭や生まれ育った環境によって、教育の機会均等が阻害されることがないよう、対策を講じることが国の責務である』と明記されています。
いまや、大きな社会問題となっている貧困や格差の問題は、児童生徒の学力差を生じさせるだけでなく、学校内のいじめ・非行・家庭での虐待・養育拒否・生徒の不登校の要因ともなっています。こうした問題は学校現場だけでは解決は困難で、社会全体で取り組んでいくべき福祉的課題であると感じ、『始めなければならない!』と思い、2013年11月に教師や学生のボランティアの方々の力を借り、学習支援プログラム、「きずなレッジ」を開始しました。

私たちの事業のコンセプトについて説明します。

きずなレッジの対象生徒は、生活保護受給世帯・生活困窮世帯の小学生~高校生と高卒認定試験の受験を考えている若者たちです。
「きずなレッジ」が対象を小学生からにしたのは、小学生、特に低学年のころからの「学習機会の習慣づけ」が大切だと思ったからです。小学校のうちから、学校だけではなかなか授業についていくことが難しく、学校以外でどれだけサポートを得られたかが、こどもたちの学力を大きく左右するとわかったからです。
確かに、事業を始めてみると、小学校低学年で勉強、特にかけ算でつまづいて、高学年に上がった時点で、不登校なる生徒もいました。
また、中学生・高校生に限らず、その年代で高校を中退または進学できなかった生徒も対象としています。「子どものいる世帯の生活状況および保護者の就業に関する調査」によると、中卒の場合、高卒者との就労先が異なり、収入の差も広がることで、生活保護受給率が一般の12倍にも及び、貧困率も4倍になるとデータに出ています。
高卒認定試験を受験・合格によって、職業の選択肢が広げられることで、自立の一歩となると思い、対象をここまでにしました。
学習支援を通じて、社会的自立・貧困の連鎖を防止が結果としての大きな目標です。
そのためには、まずは対象者全員への学習の機会・場所の提供をします。きずなレッジは、えんぴつも消しゴムもノートも教材も全部持っていなくても、すぐ勉強できるように準備してあります。学習支援にまず1度来てもらってから、継続的に通所してもらい、学習を習慣化する必要があります。
なぜなら、きずなレッジにくる生徒の多くは、学年に会った学力に達していません。基礎部分から抜けているため、基礎からおさらい復習していきます。
きずなレッジのボランティアには、現役の高校の先生がいます。試験のポイントや、入試のポイントを押さえながら、定期試験対策・受験対策も同時に行っていきます。

その後、高校進学が決まっだだけでは、安心してはいられません。4割は高校を中退しているというデータもあります。中退してから社会で働くとしても、職業は体力が必要な仕事に限られてしまい、若く体力のある時期は生活できていても、何十年先のことを感がると、安定した生活はできません。職業が限らてしまう状況を作りたくないからこそ、卒業するまで学習面・生活面のフォローをしていきます。

きずなレッジは「貧困の連鎖・こどもの社会的自立」だめだけの支援ではありません。
私たちは、「きずなレッジ」という場所を通して、自分のことを認め、自分を少しでもいいから好きになってほしいと願っています。なぜなら、自分のことが嫌いで、生きているに値しない、どうでもいい存在だと思っていては、「自分が将来、どのような生き方をしたいのか、どのような人生を歩みたいのか」なんて考えられないからです。高校進学でさえ考えられない生徒もいるかもしれません。
皆様は、こどもが夢を語れない姿をどう思われますか?哀しいと思いませんか。

きずなレッジは、彼らが自分たちのことを少しでも好きになってもらえるように、自分を認めていけるように
・安心して自分らしくいられる居場所の提供
・家庭・学校以外で出会う第3者の「大人」と接し、一人の人間として認められること
・勉強という手段を通して、自信作りをしていきます
きずなレッジに通所するうちに、解けなかった問題、できなかったことも、時間はかかるかもしれませんが、「わからない」が「わかる」にかわっていきます。「わかる」が増え、「できる」が増えます。
自尊心や意欲の低い彼らが、学習を通して、小さな「できた」という成功体験を積み重なていくことで、自信がつくと思ったからです。

実施拠点および時間について説明します。

相談窓口は、平日10:00~17:00と学習支援実施時間内を現在、想定しています。
他の業務も兼務しているため、電話相談ののち、面談が必要な場合は、随時設定します。
実施拠点は、藤沢駅から徒歩3分の場所にある藤沢カトリック教会内です。
ここは、湘南ライフサポート・きずなの事務局のおかれている場所で、教会の集会室をお借りしています。
学習支援は、毎週水曜日・金曜日の16:00~18:00と毎週土曜日の13:30~16:30に実施致します。
また、夏休み・冬休みなど長期休暇中は、高校受験希望者に向けた集中講義を実施し、来年の夏休みは、勉強合宿ができるように計画中です。

そのほかに、勉強だけではなく、「お楽しみ会」も行っています。今年の5月は、図工教室やビンゴ大会をしました。昨年の12月はクリスマス会。おやつの時間にボランティアが用意したケーキを生徒に出しました。
そして、修学支援・進学支援は拠点開設時間はもちろん、必要なときに随時動けるように準備しています。

このプログラムに、現在1回につき約10名、中学生の定期試験前は約20名ほどが参加しています。
対象者一人あたりの平均支援時間は、1回につき小学生が60分、中学生・高校生が90-100分です。
講師陣は、ボランティアの方中心で、現在約20名。この方々の半数は、教員免許資格や高校・中学校での教師経験者・塾講師の経験者です。ボランティアは藤沢市社会福祉協議会のボランティアセンターにも情報を掲示させて頂き、社協から紹介されて来て下さった方も何人もいます。

実施方法についてご説明します。

学習支援は、生徒がどのくらい学力があるのか確認後、本人のレベルにあった教材を提供します。基礎ができてない生徒も多いため、学年を下げるなど、基礎から復習していきます。
きずなレッジはマンツーマンまたは先生1人対して生徒は2名と決めて、常に一人ひとりのこどもに集中できるような体制を取ります。密接に関わるからこそ、生徒の苦手な部分を発見し、重点的に復習していくことができます。
高校の教師・教師経験者が多いことから、定期試験でどのよう問題が出題されるのか、受験勉強も学校に合わせてどう対策していけばいいのか、現場の先生たちが助言を行っています。
きずなレッジには外国籍または親の母国語が日本語ではない生徒も多くきているため、日本語教育の支援も行っています。
進学支援については、高校入試情報誌の購入と提供。生徒・講師と一緒に読みながら、希望する学校のオープンスクールや学校情報の把握。生徒にあった学校探しや選択の助言をします。今後は合同学校説明会にも参加し、学校の情報を集めていきます。
修学支援は、学習支援の場だけでは足りないなと判断した場合、家庭でもできるように課題を出します。

また、「勉強するだけじゃない楽しいところ」と思ってもらわなければ、継続して通所しないと思い、勉強の合間には大学生ボランティアが教会内でボール遊びや年2度のお楽しみ会をひらいています。ボランティア、特に学生ボランティアを「ちょっと年上のおねーちゃん・おにーちゃん」学校以外にいる半分ともだちのような関係性や距離感がある中で、生徒が学校の友達・先生・親には言えないことを言えるような環境作りが必要で、その関係性が居心地の良さに繋がると思っています。居心地が悪いところは「居場所」にはならないからです。

生活保護受給世帯の保護者には、月に1度手紙のやりとりをしています。養育環境に課題があると見受けた場合、福祉事務所のケースワーカーはじめ、各関係機関と連携。教育委員会やスクールソーシャルワーカーにも情報提供できるような関係づくりもしていけるように働きかけたいです。

その他として、まず2013年11月からの実績をお話します。

2013年11月から9月まで、のべ66名の生徒たちが参加しました。
昨年度は高校進学を希望した中学3年生が3名。全員、高校進学し、2014年度も継続して通所しています。
2014年4月~9月まで継続して48名が通所しています。高校進学希望者は6名。そして、今年の7月に高卒認定試験を受験した1名も合格しました。

続いて「きずなレッジだからこそ、できる」わたしたちの強みを紹介させてください。

一つ目は、【多様な“大人”との関わり】です。
受給世帯や生活困窮世帯の子供たちは、家庭・学校以外の人間関係が少ない傾向にあるようです。きずなレッジに通所することで、生徒の親よりずっと年下の大学生の先生・親世代の先生・親より年上、シニア世代の先生と幅広い世代の大人と関わることになります。
これは、コミュニケーション能力を養う以外にも、自分の親とは違う生き方を選択している「大人」を見ることは、「こう言う生き方をしている大人もいるんだぁ」と将来像を描く上で必要なことだ思います。

二つ目は、【外国籍生徒の受け入れとサポート】です。
外国人の子供たちは、日常の会話は日本人の子供たちと同じようにできますが、両親が日本語が得意ではないなどの理由から、語彙や読解力が不足している場合が多く、また、経済的に困窮している家庭が多く、経済的な理由で塾などに通うことも出来ません。中には親の仕事の都合などで、ある程度の年齢になるまで母国の親戚に育てられていた子もいて、日常会話にも不便を感じる子供もいます。
わたしたちは「どんな環境であっても、だれにでも、必要なこどもに学習の機会を与えたい」と考えています。日本語があまり話せないからという理由だけで断ることはありません。日本語教育免許を持っている先生や、母国語も話せる子がいるため、講師と日本語のうまくない生徒の間で意思疎通ができるように助けてくれます。

三つ目は、いろいろな問題のある生徒がいた場合などに、私たちがこれまでの困窮者支援の活動を通して培ってきたネットワークを通して、ふさわしい機関や制度につないでいけることです。それらの機関が、こどもだちの応援団として一緒に働けると信じています。

最後に、
週3回、必ずくる子も多いということは、彼らは学びの場を必要としていることがよく伝わります。
「ママに見せるんだ」と目をキラさせながプリント持って帰った小学生も、一緒に勉強を教えあう中学3年生も。「めんどくさい」って言いながらも週に2回はくる中学2年生も、友達を3人は連れてくる小学生も、バイトの前にちょっと顔出しにきましたと、近況報告くれる高校1年生も、成績があがったよって報告くれる中学生も、みんな学習の機会を必要としています。

きずなレッジにくるということは何かしら抱えているものがみんなあります。
彼らがきずなレッジにきて勉強している間は、「1人の人間」として、一緒に寄り添いながら時間を過ごして行きたいです。彼らは希望のカタマリです。彼らの中にある希望をつぶさないためにも、きずなレッジが『教育』と『福祉』をつなぐ接着剤となり、ボランティア・教育関係者・福祉関係者が一緒になって、希望のカタマリのかれらの応援団になり支援していきたいです。

以上です。(H)

1 件のコメント:

  1. 私は、中学、高校で国語教師をしていました。厚木清南高等学校の定時では外国籍の生徒への日本語を担当したこともあります。ボランティアとして週1回程度教育に携われたら・・と思っています。

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